京ヶ倉 大城

レベル:
87
標高:990m
京ヶ倉 大城

京ヶ倉(きょうがくら)・大城(おおじょう)は東筑摩郡生坂村(いくさかむら)にある里山です。京ヶ倉は標高990m、大城は標高980m(国土地理院の地図では919.2mになっていますが登山としては大城跡を指します)。
戦国時代には山城が築かれ古戦場でもありました。京ヶ倉・大城・眠り峠の登山道は、府中(松本)の小笠原氏が麻績城を攻めた時に使用した重要な戦場道路でもあったそうです。
里山とは思えない険しい登山道は、里山登山のガイドブックなどで度々見ていました。怖そうだな~と思いながらも登ってみたくなる魅力的な山です。
ヒカゲツツジの群落が素晴らしいことでも知られている山です。
今回ご紹介するコースは万平(まんだいら)登山口から登り、京ヶ倉-大城-眠り峠を通り下生坂に下山する縦走コースです。5月3日から5月5日まで送迎の無料バスが運行されていました。万平こや城跡登山口で午前8時から9時30分までに受付を済ませ、午後2時までに下生坂のバス停に下山することが条件でした。このサービスはこの時期だけのようです。毎年行なっているかはその都度確認してください。
生坂村役場 TEL0263-69-3111

アクセス

国道19号を北へ向かいます。信号機「生坂トンネル南」を左折します。信号機「上生坂」を右折して山に向かって上がって行きます。所々に登山口の案内板が出ています。松本からは1時間15分くらいで駐車場につきます。こや城跡の駐車場はそれほど広くありません。6台くらいです。朝8時前に登山口に着いたため駐車できましたが、下山後車の多さに驚きました。道の脇には至るところに車が駐車されていました。
写真は登山口に行くまでにあった庚申様。屋根も桶も藁で作られていました。

こや城跡登山口~おおこば見晴台 50分


標高約640mからスタート。
登る毎に坂の傾斜がきつくなっていきます。登山口から30分ほど歩くとヒカゲツツジがちらほら現れます。「くたびれた~」と思い始めるタイミングでヒカゲツツジの清楚な花にほっとしました。
登山道はよく整備されています。長野県内でのみ放送されているNHKの「イブニング信州」で地元の方々が整備している様子が映っていました。安全に登れるように配慮して頂きありがたいことです。この放送を見て来たと言っていたグループもいました。

おおこば見晴台

標高800m。
見晴台からの眺めは素晴らしいです。

生坂ダムによってせき止められた水の色、霞んではいるものの青い空に浮かぶ雪をかぶった白い北アルプス、疲れも飛んで行ってしまいます。

おおこば見晴台~稜線 20分

おおこば見晴台からいきなり大変な下り坂。真新しいロープが取り付けられていたので安心しました。
ヒカゲツツジが岩にしがみつくように生えていたり、稜線に出る手前には見事な群落があり、ひたすらヒカゲツツジに励まされていました。行った時はちょうど満開でした。


稜線~京ヶ倉山頂 25分

稜線に出る前から見えてはいたのですが、「本当にあそこに登るの?」と聞いてしまうくらい山頂への坂は非常に急な坂に見えました。
「いよいよ恐怖の稜線」と思ったのですが、10分位は木に囲まれ高度感はなく全く怖くありませんでした。

とうとう出てきました。恐怖の稜線。馬ノ背です。

怖いな~と思いながらも眺めが素晴らしくて写真を撮っていました。
馬ノ背は5分も歩きませんでした。慎重に歩けば大丈夫です。私は設置されていたロープの上にうっかり足を乗せてしまい、ズルっと滑った時には焦りました。ロープの強度を保つためにもロープを踏んではいけませんね。
とど岩を左に廻り込んで頂上に向かいます。きつい上り坂です。設置されたロープを使いながら登って行きます。

京ヶ倉山頂

山頂からの見晴らしもよかったと思うのですが、馬ノ背からの方が断然良かったようで、山頂からの眺めの写真は全く撮っていませんでした。30分以上頂上にいたのに写真を撮るのを忘れるほどゆっくりくつろいでいました。休憩している間に次々に登山者が登って来て大勢の人がいて何となく撮りそびれてしまったのかも。記憶がないのが恐ろしいです。

京ヶ倉山頂~大城 20分


京ヶ倉から少し下ると大城が見えました。下ってから登り返す高低差が大変そうに見えました。

岩の上を歩いたり、急な坂を下ったり登ったり、大城までの道も大変でしたが楽しい道でした。

大城山頂(大城跡)

針葉樹の高木があり涼しい山頂です。
大城跡の立看板がありました。
国土地理院の大城の位置と登山道上の大城山頂の位置は違うので、地図を見る際はご注意ください。


大城~はぎの尾峠 25分

大城から8分ほどで安曇方面展望台があります。
安曇方面展望台から7分ほどで物見岩に着きます。標高919m。

物見岩から間もなく筑北方面展望台。
ビューポイントがいくつもある登山道です。
大城まではヒカゲツツジがたくさん咲いていましたが、徐々に数が減っていきます。

はぎの尾峠~眠り峠分岐 25分


はぎの尾峠は案内板がにぎやかです。
ここから先は歩く人が少なくなるのか林全体が静かに落ち着いた雰囲気になります。大城まではたくさんのヒカゲツツジがあり清楚で控えめな花でもにぎやかに感じられたのですが、はぎの尾峠からは花などが見られず静まり返っているかのようでした。道は踏みつけられていないためかフカフカで気持ちの良い登山道です。
はぎの尾峠から15分ほど歩くと「グレースの森記念林」に着きます。いつの間にか道幅も広くなり、しゃれた名前の明るい林に出ます。東屋もトイレもあります。丸田組の四角い建物がトイレです。
「グレースの森記念林」はソムリエの田崎真也さんの寄付により住民がボランティアで森を整備したようです。「グレースの森」ってどんな意味なんでしょうね?
眠り峠に行くつもりで歩いていたのですが、グレースの森記念林からどんどん下って行くので途中で道を間違えたのではないかと思い、後ろから来たグループに道を聞いても始めて来た方でわかりませんでした。元来た道を戻って登っていると、「さっき東屋の辺りにいた姉さん達だね。」と声を掛けられました。登山道をよく知っていそうな方々だったので道を聞いたところ眠り峠への道はこのまま下っても良く、ほっとしました。「眠り峠はつまらないところだよ。」と教えてくれました。つまらないと言われたのですが、どのくらいつまらない所なのか“自分の目で見てみよう!”と足を進めました。

眠り峠分岐~眠り峠 7分

この分岐で赤矢印のほうに登っていくと眠り峠に行きます。青矢印は下生坂に行く下り道です。
眠り峠への道も巾の広い道です。
眠り峠に着きました。う~ん、確かにつまらないかも。見晴らしは良くないです。でも、ベンチがありゆっくり休めます。
先ほど道を教えてくれた男性が、この先に池があると教えてくれました。「マムシが出る」と一言頂き、舗装がされた道を1分ほど下ると道から池は見えず、池の立て札がありました。しばらく山の中の道を下って行かなければならない様子。マムシ以外のヘビにも出くわしそうな気がして行くのをやめました。
眠り峠は展望はよくありませんが、イワカガミが斜面一面に生えていました。花の咲く頃は素晴らしいのではないかと思います。

眠り峠~下生坂バス停 45分

眠り峠から5分で分岐に戻れました。
分岐から下の道も新緑の林の中でとても気持ちが良かったです。尾根沿いの林に比べると落葉広葉樹が多いように感じました。


時々花も見かけました。かわいらしい姿に心が和みます。コケリンドウを見ていたらガサガサと音がしました。音のしたほうを見るとイノシシが登山道を走っていました。幸い私達はその登山道よりも上で、イノシシは登山道からそのまま直進して林の中に消えて行きました。友人は全く気にもせずコケリンドウの写真撮影をしていました。すごい集中力なのか、のんきなのか。恐らく熊が隣にいても気がつかなかったことでしょう。
私はイノシシを見た後熊除け用のスズを振り鳴らしていました。もしも熊に会った場合、このような行動は危険らしいです。熊は威嚇されてパニックになり攻撃してくることもあるそうです。10m以内で熊にばったり会った場合は後ろを振り返らずゆっくり後ずさりしながら距離をとり、熊が逃げるのを待ったほうが良いそうです。絶対に走ってはいけません。声を上げてもいけません。とにかく脅かさないようにしましょう。

眠り峠の分岐から20分ほど下ると「眠り峠登山道入口」に着きます。ここから先はアスファルトの道を下っていきます。途中獣除けの柵があり、ネットをこぐって人間界に入ります。里の緑が美しく気持ちが良くて苦手なアスファルトの道も苦痛に感じませんでした。

感想

京ヶ倉への登山道は急坂なので京ヶ倉・大城を縦走するなら先に京ヶ倉に登り大城を通って眠り峠分岐から下生坂に下るほうが楽だと思います。
京ヶ倉直下の馬ノ背は怖さもありますが見晴らしの良い場所なので気をつけて眺めを楽しんでください。
友人と私は家に戻ってから「楽しかったね。ありがとう。」とメールをしあっていました。そしてお互い登山前は悩み事で気分が凹んでいたとその時初めて知りました。京ヶ倉・大城への登山道はヒカゲツツジの見事さ、集中して登らなければならない怖さ、素晴らしい眺めなど、凹んでいた気持ちを忘れてしまうほどいろんなことがある里山でした。山登りっていいな~とあらためて感じました。
【登山者・記者:アルプスちえみ】