上高地~槍ヶ岳~大キレット~北穂高岳~涸沢 縦走

レベル:
山行日: 2008.08.04
84
標高:槍ヶ岳(3,180m)北穂高岳(3,190m)
上高地~槍ヶ岳~大キレット~北穂高岳~涸沢 縦走

上高地を起点に、北アルプスのシンボルの槍ヶ岳に登り、そこから北穂高岳に縦走するコースをご紹介します。北穂高岳まで行けば、その先、穂高連峰の最高峰の奥穂高岳まで足を延ばすことも可能で、全国の登山家のみならず、今や韓国など海外の人にも人気のコースです。
槍ヶ岳から北穂高岳への途中には、「大キレット(切戸)」という、深いV字谷に下って登る上級コースがあります。断崖絶壁をつたい歩きする箇所もあり、高所が苦手な方や初級者には難しいです。
槍ヶ岳の説明と単独の登山はこちら
北穂高岳の説明と上高地・涸沢からの単独の登山はこちらをご参照ください。

上高地バスターミナル〜横尾〜槍沢~槍ヶ岳山荘

8月初めで天候も道の状態も良く、横尾から1時間20分で槍沢ロッジ、さらに1時間40分で天狗原への分岐に着きました。
グリーンバンド」と呼ばれる美しい氷河の跡に沿って歩くと、水場があります。ここから先には水場がなく、槍ヶ岳山荘内の水も雨水なので、貴重な水です。
左にカーブし、雪渓を横切ると、写真(クリックで拡大)のようなすばらしい光景が待っていました。
槍ヶ岳をバックに、雪渓と、雪解け水に咲くチングルマの花です。

天狗原への分岐から約2時間、槍ヶ岳山荘まで残り30分の位置で右に折れ、殺生ヒュッテに立ち寄りました。ヒュッテから槍ヶ岳山荘までは、東鎌尾根経由の方が、険しいが、所要時間は同じで、右の写真のような絶景が見られます。
45分で槍ヶ岳山荘に到着。
この日は、夏山登山シーズンの土曜日なので、何と500人以上もの宿泊客(うち韓国人が80人)が泊まっていました。山荘は、定員(=畳一畳に一人)が400人なので、畳一畳に1.5人のスペースの部屋も。
夕食の時間も、30分おきに7回にも分かれていました!これで皆が黙っていたら収容所のようですが、そこは遠路あこがれの槍ヶ岳まで来た者どおし、知らない人でも話が盛り上がります。
槍ヶ岳に近いのと、ブランド名で槍ヶ岳山荘に泊まる方が多いとのことですが、少し下の殺生ヒュッテの方が空いています。
槍ヶ岳山荘のご主人は、山小屋のトイレを長年苦労して改善された方で、山荘に4つもあるトイレは、とてもきれいです。山小屋では、使用済みのトイレットペーパーは焼却するので、便器でなく別の容器に捨てるよう、ご注意を。

槍ヶ岳山荘~槍ヶ岳~槍ヶ岳山荘(1時間)~大喰岳(30分)~中岳(30分)~南岳(1時間半)

槍ヶ岳中腹から見た槍ヶ岳山荘と穂高方面

2日目は、まず、朝6時に槍ヶ岳に登りました。途中で間違えて、下りのルートを登えて、引き返しました。岩の○や×の印をきちんと探すことと、下だけを見ずに、行く先の状況を確認しながら歩くことが大事ですね。
槍ヶ岳の上高地からのルートと登頂の詳しい説明は、アルプスちえみさんの記事をご覧ください。
槍ヶ岳山荘を後にし、穂高連峰に向かいました。槍ヶ岳から先は日本人のツアー客が減り、単独行の人と韓国人のツアー客の比率が増えます。
すぐに、新穂高温泉に行くルートとの分岐「飛騨乗越」があります。ここから、3,000mを越えるいくつかのピークとその間の稜線を歩くすばらしい縦走ルートです。
快晴で、行く手には穂高連峰、振り返ると槍ヶ岳のすばらしい眺望。
左側には、常念岳・大天井岳・燕岳などが見え、その右奥には富士山・八ヶ岳も見えます。

30分で大喰岳おおばみだけの頂上に到着、その後、30分で中岳の頂上、そこから左に岩場を下る途中、雪渓の下に、7月の下旬~8月中旬の期間だけ利用できる雪解け水の水場がありました。
穂高縦走の醍醐味を満喫しながら、さらに2回ピークを過ぎ、お昼前に南岳に到着。
途中、天狗原から槍沢に戻るルートへの分岐、また、南岳小屋の手前に、槍平小屋から新穂高温泉に下るルートへの分岐があります。大キレット越えに自身のない方や悪天候時はそちらに回避してください。
この日は、下界は35℃の猛暑でしたが、上は涼しい風が吹き、快適!
ちなみに、北穂高小屋では、朝、ストーブを使っていました。涼しいので日差しの強さを忘れますが、稜線歩きなので、UV対策をしないと、しっかり日焼けします。

南岳~《大キレット》長谷川のピーク(2時間)~北穂高岳(1時間半)

少し先に南岳小屋があり、その先に、展望台があります。大キレットの急な落ち込みとその向こうの穂岳連峰を目の当たりにでき、左のような写真が撮れるポイントです。
展望台の右側から、いよいよ大キレットへの下りが始まります
岩場の下りを慎重に下ります。ハシゴや鎖の連続で、ありがたく利用します。
下りが一段落し、1時間以上、上り下りを繰り返した後で、「長谷川のピーク」への登りになります。大キレットの中間地点なのですが、ここと、この後の「飛騨泣き」が最大の難所です。
右の写真のような、「え、ここ下りるの?マジ!?」と言いたくなる断崖絶壁や、わずか数cmのでっぱりを足場にして歩を進める所もありました。
「長谷川のピーク」から下ると、「A沢コル」と呼ばれる少し広い谷底が見えてきます。手前にベンチもあり、お弁当を食べました。谷底では、落石事故が多いので、上を気にしながらの休憩です。
ここから急な登りがあり、山の右側に回り込んでからが飛騨泣きという、名前どおりの難所です。まさに一難去ってまた一難。足元が見えない岸壁を鉄のピンをつかみながらつたい歩きし、最後は登りに次ぐ登り。
展望台で渓谷美を見ながら一服し、さらに登ると、北穂高岳小屋です!
小屋の前に広いテーブル席があり、ビールを片手に、今登って来たキレットとその向こうの山々を見ながら達成感にひたります。
日本一高い所にある山小屋の北穂高岳小屋。小屋のすぐ裏の北穂高岳のピーク3106mに登り、山小屋の食事としては美味しいと言われる夕食を食べて一泊。

北穂高岳~涸沢(2時間)~横尾(2時間)~上高地バスターミナル

3日目は6時に出発。小雨で下が濡れている上にガスで視界が悪く、慎重に下ります。
この、北穂高岳から涸沢に下りる「南陵」ルートも危険度の高い所で、キレットなどを越えた安心感で油断するからか、毎年事故で亡くなる方がいるようです。
ガスの中に、涸沢の雪渓とヒュッテが見えた時は感動!
涸沢のすぐ下にもまだ雪渓があり、暑い空気との間で霧が発生していて何とも幻想的でした。

温泉

上高地清水屋ホテル(外来入浴の受付は13時半まで)と上高地温泉ホテル(15時半まで)でかけ流しの温泉に入れます!
詳しくは上高地 Official Websiteをご覧ください。


登山者の感想

事前に経験者の話を聞き、八ヶ岳などに登ってトレーニングしましたが、天候に恵まれて、無事、夢の槍ヶ岳と穂高への縦走までできました。
松本市内に、あんなにも非日常の場所があることが不思議で、思い出すと、別の世界から帰還したような気分です。
家族・同僚・友人、登山道を常時整備して頂く山小屋のご主人たち、いろいろな方に感謝です。
【2008年8月2日~4日 登山者・記事 常念あきら】

アクセス方法:槍ヶ岳 槍沢コースのページのアクセス方法の説明をご覧ください。