錫杖岳 マルチピッチクライミング
「錫杖岳(しゃくじょうだけ)」は、岐阜県の「笠ヶ岳」南端に位置する
垂直の岩峰です。槍見温泉から笠ヶ岳へのクリヤ谷登山道を登って行くと、
山奥から突如現れるこの画像のビルディング状の岩場が出現します。これが
前衛壁で、数多くのクライミングルートが引かれているのです。
最近オリンピックの正式種目となって一躍有名になってきたクライミング。
今回は、この錫杖岳のマルチピッチ・クライミングとしては有名なルート
「左方カンテ」というルートをご紹介したいと思います。
アクセス
松本市から錫杖岳へと登山口である槍見温泉までのアクセスは、西穂高岳
とほぼ同じアクセス方法です。新穂高なほんの少し手前に「槍見温泉」は
あります。→「西穂高岳へのアクセス」
槍見温泉からは、笠ヶ岳へのクリヤ谷登山道を歩いて登っていきます。
1時間ほどすると、上記の錫杖岳前衛壁が見えてきます。その錫杖谷を
クリヤ谷登山道から外れて、錫杖谷をもう1時間ほど遡上していくと、
この画像の前衛壁の取り付きに到着します・・・。
1~2ピッチ目
「左方カンテ」ルートのスタートは、このような大きな岩の間のような
セクションです。1~2ピッチ目は、このまま岩の間の「ルンゼ」を伝って
登って行きます。最初の1~2ピッチ目は垂直の岩場という感じではなく、
このように岩と岩の間を登ります。アンカーボルトは打ってありません。
なのでカムデバイスやナッツなどを使って自分でプロテクションをとる
必要があります・・・。
2ピッチ目の終了点まで来ると、一気に視界が開けて、高度感満点に
なります。バックにはアプローチで通ってきた錫杖沢も見えます。
3~4ピッチ目
3ピッチ目からは一気に視界が開けて、岩壁も垂直のセクションに
なっていきます。垂直の岩壁のフェイスを右側へと回り込むように
上がっていきます・・・。この辺りは少しルートファインディングが
難しいかも知れませんが、焦らずにホールドを探しながら右上へと
回り込むように登って行きます。
4ピッチ目は、少しトラバースの水平移動をしてから、岩と岩の間に
挟まって登るような、「チムニー」というセクションになります!
この辺りから、バックに穂高連峰も見えて来ました! ビレイ点の
足元はもう100mほど切れ落ちていて、素晴しい高度感です。
4~5ピッチ目
トンネルのような「チムニー」セクションを抜けた上の5ピッチ目は
少し開けた岩壁のラインのルートになります。ここも登りやすい所を
ホールドを探しながら登っていきます・・・。
クライミングは上へ上へと登るので、少し登るだけでも一気に高度が
上がっていきます。1ピッチはロープ1本分という事ですが、5ピッチ
登ってくるだけで高度感満点ですね! この5ピッチ目では少し砂が
浮いていますが、焦らずしっかりとホールドを持って登ります・・・。
6~7ピッチ目
この6ピッチ目が「左方カンテ」ルートのハイライトのピッチです!
スッキリした岩質、垂直に直上するチムニーにフェイスのルートで、
登っていて一番楽しいピッチとなると思います。出だしは右側の岩
との間のチムニー、後半は左側の岩のフェイスルートになっています。
ここでも、ボルトのプロテクションは一切ありませんので、カムで
自分でプロテクションを取りながら、少しずつ登って行きます・・・。
グレードは5.8とそれほど高くは無いのですが、初めてだとホールド
が分からず緊張しました。
8~9ピッチ目
7ピッチ目の終了点から、この岩場の左側の角=コーナーに出ます。
「左方カンテ」ルートは、そこから左側のフェイスを登っていきます。
8ピッチ目の下部は脆いフェイスルート、上部では急斜面の登山道の
ようなセクションとなりました。
ラストの9ピッチ目は上部へと上がるだけの登山道のようなセクション
でした。ここの左にある木を越えると「左方カンテ」ルート終了です。
全9ピッチ登って完登した終了点は、こんな感じの少し広くなった所に
なります。この上にもう1ピッチあり、登るとバックの岩峰の上までは
行く事が出来ますが、クライミングとしてはここが終了となります。
頂上からの景色と下りの懸垂下降
「左方カンテ」ルートの終了点からは槍~穂高連峰が全て見渡せます!
右側の三角錐形に尖ったのが西穂高岳。その次の台形が奥穂高岳です。
真ん中にへこんだのが「大キレット」。そして一番左に尖っているのが
槍ヶ岳になります。
ここまでクライミングで9ピッチ登ってきて、この景色を見ながらの
ランチは、まさに最高の気分になれます! まさに感無量です!
帰りは、50mロープを2本使って懸垂下降で下っていきます・・・。
下りのルートは、7ピッチ目の終了点までは登ってきたルートを
下り、そこからは左側の壁を垂直に下へと下っていきます。
そこには下降用のビレイポイントが作ってあり、ボルト2本ずつ
打たれているので、それにロープをかけて下っていくのです。
5回の懸垂下降で錫杖沢に辿り着きます。そこからはまた錫杖沢
を下って「クリヤ谷登山道」まで行き、そこから登山道を歩いて
帰ります・・・。帰りも約2時間ほどでした。
今回の「錫杖岳マルチピッチクライミング」、最近クライミングが流行って
いて、オリンピックの正式種目にもなりましたので、比較的簡単なグレード
のマルチピッチクライミングが楽しめる「左方カンテ」をご紹介しました。
錫杖岳前衛壁には、さらに難易度の高いルートがたくさんありますので、
これからも自分の登攀スキルを磨いて挑戦していきたいと思いました。
【注意!】
今回の「錫杖岳マルチピッチクライミング。」は、通常の登山ではありません。
ロープやカラビナ、ハーネス、カムデバイスなどを使うクライミングルートです。
アルパイン・フリークライミングのルートなので、クライミングに慣れていて
クライミングギアが取り扱えるエキスパートの方のみが行くことが出来るルートです。
ハーネスやカラビナとロープを使いこなすスキルが必要ですし、岩場での行動も
厳しくたいへんだと思われます。もし、この「錫杖岳マルチピッチクライミング」
に行ってみたいと思われる方は、必ず!岩場登山が出来る専門の山岳ガイドさんと
一緒に行って下さい! くれぐれも、よろしくお願いします。
【登山者・記事 ハタゴニアン】