西穂高岳・西尾根登攀→小鍋谷スキー滑降《厳冬期》
今回は、西穂高岳から西側(岐阜県側)に続いている「西尾根」を、
新穂高温泉から歩いて登り、西穂高岳山頂を踏んでスキーで滑って
帰ってくるというルートに挑戦してみました。このルートは、雪の
ある厳冬期でしか登れない貴重な冬山のルートです。
松本市からのアクセス
松本市からの車でのアクセスについては、「西穂高岳」のページを
ご覧下さい。→「西穂高岳へのアクセス」
新穂高登山口~穂高平小屋(約1時間)
新穂高温泉から西穂高岳山頂までは標高差1800mもあるので、登攀には
かなり時間がかかるという事で、僕たちはまだ真っ暗な3:30に新穂高温泉
をスタートしていきました。
新穂高温泉からは、一路槍ヶ岳へと続いている雪に埋もれた「右股林道」を
進んでいきます。スタートしてしばらくは工事のための除雪が入っていました
が、すぐに林道は深い雪に埋もれていて、ラッセルを強いられました・・・。
穂高平小屋~西尾根登攀~西穂高岳山頂(約7時間半)
穂高平小屋を通り過ぎた辺りから、林道を外れて西尾根の急斜面へ取り付いて
いきます。ここからは、延々とジグを切りながらスキーで登って行くのですが、
滑りやすい雪質に、かなり密になった樹林帯がとても登りにくいイヤな感じで
とても難儀しました・・・。この辺りでやっと日が昇ってきたらしく、少しずつ
明るくなってきたのでした。
西尾根のこの辺りの樹林帯は登っても登ってもなかなか終わりません・・・。
それよりも登るにつれて尾根がどんどん狭くなってきて、最後にはとうとう
人が一人しか通れない程狭くなってしまったのでした・・・。両側はスッパリと
切れ落ちていて、しかも稜線は雪庇になっていて!、とても登りにくい雪質
で、全然前に進まず時間だけが過ぎていき、ストレスな感じで難儀でした・・・。
バックには笠ヶ岳~錫杖岳の岩峰も、時々見え隠れしていました。
それでも、四苦八苦しながら、ようやく2400m付近にある大岩峰に当たりました。
ここの岩峰は大き過ぎて稜線を登れないので、左の雪の急斜面をスキーを担いで
アイゼンに履き替え直登することにしました。しかし、これまたスキーを脱ぐと
足が膝まで埋まる深い雪に、また本当に苦労しました。時間だけが過ぎていって
全然進んでいない感覚でした。
しかし!、ここの2400m大岩峰を回りこんで西尾根の稜線へと登り切ると、
一気に眺望が開けて、ここまで見えていなかった西穂高岳の山頂が圧倒的な
大迫力で、目の前に見えてきました!!!
そして、真ん中に見える滑る予定の「小鍋谷」は滑り易そうで広大な大斜面
です! これには僕たちも、今までの登攀のストレスを吐き出すかのように
思わず叫んでしまったのでした!
そこからは、雪と岩の西尾根の稜線が、西穂高岳山頂まで続いていたので
アイゼンを蹴り込んで、ピッケルを差し込んで、一歩一歩確実に、そして
安全にと登っていきました。
バックには、これまで登ってきた西尾根の稜線が見えます。ちょうど僕の
頭の上が2400mの岩峰です。そこから右側へと稜線を伝ってグルッと登って
きたのです。
そして、ついに!、西穂高岳の山頂が手に届くぐらいにまでなって来ました!
最後の急斜面の岩場の登攀を、確実にこなしていきます。手に持つピッケルや
足のアイゼンが滑ったら一巻の終わりです・・・。でも山頂直下のここまで来れば、
もう敗退はないです。ここまでの苦しい登攀の連続を思い出して、素晴らしき
アルピニズムを感じていました。
そして!、ついに!!、西穂高岳山頂に到着しました!! ヤリマシタ~!!
今回もロープウェイを使わずに一番下からスタートして、とても難儀で苦しい
登攀の連続だったので、今回西穂高岳の山頂に辿り着いた時には、とても嬉し
かったのです。 12:10頃の到着だったので約8時間40分ほどの悪戦苦闘でした。
西穂高岳山頂と西尾根からの景色
山頂では雲が流れていたので、スッキリと景色が見れませんでしたが、雲の
間から見えた景色と西尾根登攀中で見れた景色をご紹介したいと思います。
コチラは、西尾根の途中から見えた「ジャンダルム」です。 雲が多かった
ので奥穂高岳は見れませんでしたが、雲が一瞬だけ途切れて「ジャンダルム」
が見えました。岐阜県側へとスッパリと切れた雪の稜線は、まるでヒマラヤの
ようでした。「ジャンダルム」の形も、長野県側から見るのとはまた違って
いました。
コチラは、今回登ってきた「西穂・西尾根」です。この稜線をず~~っと
たどって、西穂高岳山頂まで歩いて登ってきたのでした~。
コチラは、西穂高岳山頂から見下ろす上高地です。コチラも雲の切れ間から
一瞬だけ見えました。この右側の稜線は、西穂山荘からの稜線です。通常の
登山者はこの稜線を辿って歩いてくるのです・・・。
西穂高岳山頂~小鍋谷スキー滑降~新穂高登山口(約1時間半)
僕たちはスキーで行ったので、スキーで滑って帰りました。
西穂高岳山頂の稜線から少し降りた所から、スキーで滑降開始しました。
稜線から1ピッチほどは、カリカリのハードなアイスバーンでしたが、少し
下りたところからは薄いパウダーが溜まっていて、いつも通り気持ちよく
滑ることが出来ました。西穂高岳山頂から続く「小鍋谷」の広大な斜面に
出来るだけ大きなターンでシェプールを描いて帰っていきました。最後は
右股林道をまたゆっくりと滑りながら帰っていきました。
この西穂高岳を山頂から滑るという僕の夢は、今回は久しぶりに成功させる
事が出来て、身体は満身創痍だったのですが、心の中は達成感いっぱいにする
事が出来ました!! 夢を見て、日々チャンスをを伺い、天気とタイミングと、
雪の状況を見ながら、またこれからもいろんな山へ挑戦していきたいと思うの
でした。
【注意!】今回の「厳冬期、西穂高岳・西尾根」は、冬山登攀のアルパインクライミング的ルートなので、クライミングギアが取り扱えるエキスパートの方のみが出来るルートです。ピッケルとアイゼンを使いこなすスキルが必要ですし、冬山での行動やマイナス10℃の中での体温管理もたいへんで非常に厳しいです。もし、どうしてもこのルートに行きたいと思われる方は、必ず!アイスクライミングが出来る専門の山岳ガイドさんと一緒に行って下さい。よろしくお願いします。
【登山者・記事 ハタゴニアン】