荒船山(内山峠~経塚山~荒船不動尊)

レベル:
山行日: 2010.11.13
61
標高:1422.5m
荒船山(内山峠~経塚山~荒船不動尊)

荒船山(あらふねやま)は長野県佐久市と群馬県甘楽郡下仁田町にまたがる標高1422.5mの山。遠くから見ると荒波に浮かぶ船のように見えることが名前の由来。船尾を思わせる高さ200mの絶壁の艫岩(ともいわ)からは浅間山、妙義山、北アルプス、八ヶ岳が眺められます。最高峰の経塚山(きょうづかやま)の標高が1422.5mで日本二百名山にもなっているのでこの頂上を目指す人が多いと思いますが、木に囲まれていて展望があまりよくないので艫岩をメインに山行予定をたてるほうがいいかもしれません。
今回はやまたみ登山学校OB会やまたみ倶楽部のメンバーを中心に講師1人を含め総勢13人でマイクロバスを利用して行きました。マイクロバスなので登り口と降り口を別々の場所に設定できました。荒船山の登山コースはいろいろありますが、今回ご紹介するコースは内山峠から登り荒船不動尊に下りるコースです。記載の時間は小休憩を含むゆったりとした歩調の時間です。

アクセス

内山峠登山口へは車で行くことをお薦めします。
長野自動車道松本I.Cから高速道路に乗り長野方面に向かい更埴ジャンクションで上信越自動車道に入り佐久I.Cで降ります。南に向かうと国道254号線にぶつかるので左折して東に向かいます。途中で右側に荒船山登山口の案内があるので右折します。道をどんどん上がっていくと内山峠登山口の駐車場があります。

内山峠~艫岩展望台 1時間50分

<内山峠(標高約1060m)~鋏岩修験道場(標高約1200m) 50分>
8時30分頃に内山峠駐車場に着いたのですが既に満車でした。駐車スペースは20台ほどと登山地図には書かれていましたが、それ以上停まっていたように思います。車のナンバープレートから主に関東から来ているようでした。こんなに人気があるとは知らなかったのでみんなで驚いていました。駐車場にトイレはないのでご注意下さい。私達は高速道路のパーキングエリアや一般道の脇にあるコンビニなどで済ませてきました。
登山口から20分ほどはゆるやかな坂が続き歩きやすいのですが、時々痩せ尾根があるので足元には十分注意してください。この山行の時は落ち葉が登山道に積もり道の様子が全く見えませんでした。講師の高橋さんから落ち葉の下にある石や木の根に十分注意して歩くようにアドバイスがありました。登山口から山頂近くまで背の高さほどの笹スズタケが登山道脇に生えているので視覚的に囲まれている安心感があるかもしれませんが、一歩間違えば転げ落ちてしまうかもしれません。
20分を過ぎると突然急坂になります。写真を撮り忘れてしまったのですが、登山道の脇にはロープが張られていました。その近辺は崖のような状態でロープが縛り付けられている木もやっとの思いで崖にしがみついているようで危なっかしく感じました。「木が落ちないようにロープで縛ってあるんじゃない?」なんて冗談を言っていたくらいです。
登山口から50分もすると経塚山が見えてきます。紅葉も終わり木の葉が落ちていたのでよく見えました。そこから間もなく修験道場跡の大きな岩が見えてきます。


< 鋏岩修験道場~一杯水 30分>
修験道場跡には建物があったらしく礎石がいくつもありました。

艫岩に近付くにつれ姿がはっきりと見えてきます。木に葉がついてないと良く見えますね。
< 一杯水~台地 20分>
一杯水は橋から直接汲むことができません。講師の高橋さんが岩にしがみつきながら水を汲んでくれたのでちょっとずつみんなで頂きました。

ここから先は、ハシゴを昇ったり、岩の上を歩いたりします。

< 台地~艫岩展望台 10分>
台地に出れば10分ほどで展望台に着きます。

艫岩展望台(標高約1340m)

すっきりとした眺めを期待していたのですがこの日は生憎霞んでいました。天気予報では晴れだったのですが黄砂の影響だったのでしょうか。それでも浅間山はわかりました。
絶壁なので身を乗り出して下を見るのは危険なので十分注意して下の景色を覗き込みます。国道254号線のくねくねとした道が良く見えます。もう少し早ければ紅葉も見事だったことでしょう。
山の本によれば、艫岩でロッククライミングをする人もいるそうです。石などを落とさないように注意してください。

展望台の近くには東屋とトイレがあります。しかしこの時女子トイレは使えなくなっていました。鍵が壊れていて使えないと説明書きがあり、絶対に入れないように入口には斜掛けに板が打ち付けられていました。そのため男子トイレに女性の列ができていました。こんなところで思いがけず待ち時間ができてしまいました。

艫岩展望台~経塚山 50分

台地を歩いていると途中で水が流れていました。こんな山のてっぺんで水が流れているなんてとても不思議でした。この水は飲めそうでした。
荒船山には神話があるらしく昭和初期に地元の人達が立てた石碑がありました。その近くにあった説明書きには以下のことが書かれていました。
~前略~『信州にある建御名方神(信州諏訪神社)が、寒さが厳しく、海もない信州では、天照大神の命による、「野菜、魚以外は殺生して食してはならない」とのことでは生きてはいけない。そこで、猿、鹿を食べても良いか聞きに訪ねたところ、天照大神は「ならぬ」との返事でした。そこで温暖な平地で、海にも出られる関東の地へ領地を拡大すべく戦の準備を始めました。この事を知った、経津主神(香取神宮)と建御雷之男神(鹿島神宮)は、建御名方神を迎え撃ちにするべく、信州境にあるこの地に赴き、陣を構えた。名だたる軍神たちが戦いを起こせば国が荒れることを心配した天照大神は、孫であるニギギをこの地へ使わせ、3神の和議を結ばせた。』~後略~
台地には祠もあり、この近くで昼食。この場所で昼食をとったのは正解でした。ゆっくりと落ち着いて食べることができました。
荒船不動へ行く道との分岐を過ぎた辺りから傾斜がきつくなってきます。この分岐から頂上までは何の問題もなければ10分程度で行けると思います。駐車場の様子から察してはいたのですが人が多くて経塚山への登山道は道幅が狭いためすれ違うときには待っていなければなりませんでした。それで15分くらいかかりました。
坂の途中で突然「落石~、石が落ちた~」と大きな声が聞こえました。最初に声を出したのは講師の高橋さんでした。続いて私達は下の人たちにわかるように「ラク~」と大きな声を出しました。幸い落石は登山道から反れて下にいた人たちにも影響はありませんでした。落石を引き起こしてしまった人は声も出なかったのか?処置の仕方を知らなかったのか?どうもその一行の人たちは山に不慣れなように見えました。ストックの使い方もわからなかったのか、坂を下っていくというのにストックを短くしたままで歩き辛そうに下りていました。道は湿っていて滑りやすかったこともありますがストックの使い方が基本的に違っていました。私が見た限りでは一人だけストックを長くして使っていました。30名以上のグループだったようですがリーダーと思える人もいませんでした。どうやらバスツアーで来て、バスの出発時間が決まっているのでそれまでは自由に山に登っていてよかったようです。その人たちが団子になって登っていたのです。比較的安全な荒船山でも登り方を間違えれば事故になりかねません。参加者の個人責任はもちろんですがツアーを企画する人は参加者の登山経験を考慮する必要があるように思います。

経塚山

登ってくる途中も混雑していたので頂上には人がいるとは思っていたのですが、狭い山頂には大勢の人がいて驚きました。とにかく荒船山には想像以上に人がいるので驚いてばかりでした。視界はあまり良くないのですが、荒船山最高峰の山頂ということもありここで昼食をとりたくなる人が多いようでちょうど昼時で混雑していました。とても休憩する気にはなれないくらい次々に人が上がって来たので早くここを立ち去りたい気分になってしまいました。山頂の様子は鍋倉山に似ているような気がしました。鍋倉山のほうが落ち着けましたが。

経塚山~荒船不動尊 1時間

<経塚山~星尾峠(標高約1270m) 25分>  <星尾峠~荒船不動尊(標高約1040m) 35分>
登ったときの状況もあり経塚山から下る道は滑りやすいので落石など起こさないように慎重に下ります。
荒船不動への分岐から下は階段がしばらく続きます。よく整備されていて歩きやすい道です。しかも人が少ないのがいいですね~。熊がいるみたいなのでにぎやかなほうが安全なのでしょうが、やっとほっとできたような気がします。私達のグループ以外の人は1人だけすれ違った程度でした。
星尾峠に向かう道

荒船不動尊から5分も下らない場所に駐車場があります。こちらも20台ほど停められます。空いてましたよ。


感想

本当に人の多さには驚きました。普通の里山(あまり人がいない)程度に考えていたのですがとんでもありませんでした。このところ静かな山歩きが多かったので衝撃があったのかもしれません。
コースの面白さからすれば、内山峠から艫岩へのコースは時々見られる景色が良く、修験道場跡や一杯水など見所があり楽しいと思います。自然に溶け込むことを楽しむなら静かな荒船不動尊コースがお薦めです。
今回の山行はどちらの良さも楽しめる周回コースで本当に良かったと思いました。
新緑の時期にまた登りたいな~と思ったのですが、山の本によると4月中旬~5月下旬と紅葉の10月中旬~11月中旬は静かな山歩きは楽しめないと書かれていました。確かにそうでした。さて、いつ行こうかな~。
【登山者・記者:アルプスちえみ】