焼岳《厳冬期》

夏のシーズンは登山道の距離も短めなので、比較的簡単に登ることが出来る
「焼岳」ですが、上高地が冬のシーズンは閉鎖されているので、厳冬期には
ほとんど入る人はいません・・・。 なので、今回はまたスキー滑走も兼ねて
冬場は入り易い岐阜県側から登りに行ってみました。
松本市からのアクセス方法
松本市から新穂高温泉までのアクセスについては、「西穂高岳」のページをご覧ください。
岐阜県側の登山口は「中尾温泉」という所の林道終点から始まります。
新穂高温泉に向かう少し手前、トンネルを抜けたところに「中尾高原口」
という道路の分岐があり、そこから上がって行きます。林道終点までは
約5分です。
中尾温泉・焼岳登山口~焼岳山頂。(5~6時間)

中尾温泉の林道終点の登山口に車を止めて、朝7:00にスタートしました。
雪が1m以上も積もった林道を、スキーにシールを貼って登って行きます。
ここから見える「焼岳」の山頂は、遥か彼方!というぐらいに遠くに
感じました・・・。

少し登って行くと、いくつか堰堤が出て来ます。数か所を林道沿いに
登って行くと、最後の一か所は越えられない程の大きな堰堤になります。
ここを渡渉(川を渡る事)して、向こう側に伸びている林道をさらに
そのまま辿って登って行きました。

このルートの最初は、樹林帯の急斜面をシール登攀で登って行きます。
しかし、この日の雪質はとても軽くて良い感じだったのですが、なぜか
あまりシールが利かなくてツルツル滑るイヤな雪質で、とても登りにく
かったのでした・・・。
バックには、今回のターゲットである「焼岳」が光り輝いていました!
ここまで1時間ぐらい登って来ていますが、まだまだ遥か彼方に見えます。
でも、あの岩稜の頂きに立つのだっ!という思いで、モチベーションは
とても高かったです。

シール登攀でガシガシと登って行くと、2時間半ほどでやっと樹林帯を
抜けました! バックには、笠ヶ岳~抜戸岳の屏風状の山々が大迫力で
見えていました! 高度感も素晴しかったです。

樹林帯を抜けてさらに30分、ようやく山頂直下の岩場まで来れました。
この辺りから雪質が変わりアイスバーンのように硬くなってきたので
ここからはシール登攀を諦めて、足裏にアイゼンを装着して登ります。
さあ、焼岳の山頂はもうスグだ!!

スキーを担いでアイゼン登攀にしてからスグは、深い雪のラッセルを
強いられましたが、その後はかなり斜度もキツくなってきて、斜面は
硬いアイスバーン状になって行きました・・・。ピッケルやストックを
雪の斜面に差し込んで、一歩一歩確実に登って行きました。

しかし!・・・その後、いくつもの岩稜を越えても越えても、またその先に
岩稜が出現して来ました。これを越えたらもうスグ山頂か?!と思ったら、
さらにその先にさらに岩峰が出現してきます。そのたびに遠くなる山頂に
さすがの僕たちでも心が折れてしまいそうでした・・・。

それでも、ここまで4時間半程、ひたすら登り続けてきて、やっと!
本当の焼岳の山頂である外輪山が見えて来たのでした。たぶんこの
岩場を越えたら、やっと本当の山頂です。

最後の最後の岩場では、担いできたスキーなどの荷物をコルにデポして、
空身でアイゼン&ピッケルのフル装備で、焼岳南峰山頂へとアタック
して行ったのでした。

そして、登山口をスタートしてから登攀しっぱなしで、5時間ジャストに
焼岳・南峰の外輪山山頂の一部に登頂したのでした!!
厳冬期、焼岳・山頂からの景色です。

コチラは、焼岳、南峰の火口です。雪に埋まっていてボウル状に見えます。
向こう側左に見える岩峰が、夏シーズンの登山の時に登る北峰山頂です。

焼岳・南峰から見える「穂高連峰」です。さすがにこの時期は雪で
真っ白です。遠くには槍ヶ岳まで見えました!

コチラは、西向きの岐阜県側の景色です。笠ヶ岳~抜戸岳の屏風状の
山々が大迫力で見えます。真ん中ちょっと左に少し尖っている笠ヶ岳の
遥か下にある集落が、今回スタートした中尾温泉集落です。あそこから
登ってきたと思うと、感慨深いです。
焼岳・山頂からスキー滑降~登山口(1時間半程)

焼岳・南峰のコルの一部から、スキー滑走のドロップ・インしました。
上部の広大な急斜面では、とても良い雪質で快適に滑れました!
滑って行くコースは、焼岳北面に伸びる「黒谷」に沿って滑りました。
雪に埋まった「黒谷」は、自然に出来たハーフパイプのような地形
でした。中盤から下部の斜面では、気温が上がったために雪質が
かなり重くなって滑るのに苦労しましたが、サイドからの雪崩に
注意しながら、なるべく早く通り抜けて行きました。

「焼岳・黒谷」は、下部に行けば行くほど谷が深くなっていくのでした。
楽しいスキー滑降も「アッ!」と言う間に終了に近くなり、振り返れば、
さっきまで立っていた焼岳山頂が、一瞬でもう遥か遠くに見えるほどに
滑って来ていたのでした。
この後は、一部露出していた滝と川を何とかトラバースして、一番最初に
渡渉した大きな堰堤を、左に巻いて滑ってクリアして、またスタート地点
である中尾温泉まで林道を滑って帰っていったのでした・・・。
かくして、今回も快晴のコンディションの中で、最高の冬山登山と
山スキーを「焼岳北面・黒谷」ルートで楽しむことが出来ました!
そして、これからもまだ行ったことが無い未踏のルートへ滑りに行き
たい!、新たな夢をまた実現に体験したい!、と強く思うのでした。
*今回の「厳冬期、焼岳」も、冬山登山と山スキーのエキスパートの方のみが出来るルートです。行動時間も雪の中で7時間以上と非常に厳しいですし、厳冬期の冬山登山の技術も必要です。もし、どうしても「厳冬期・焼岳」登山に行きたいと思われる方は、必ず山岳ガイドさんと一緒に行く事をオススメします。くれぐれも安全登山でよろしくお願いします。
【登山者・記事 ハタゴニアン】