八ヶ岳 裏同心ルンゼ アイスクライミング《冬期》
今回は、アイスクライミングのメッカである「冬の八ヶ岳」をご紹介したいと思います。
雪で凍りついた岩場や凍った滝である氷瀑などにアイスアックスを打ち込んで登って行く「アイスクライミング」という冬山登山のスタイルがあります。そのアイスクライミングが簡単に出来る場所はそうたくさん無いのですが、冬の八ヶ岳は極寒の気温になるので夏の滝が凍りついてたくさんのルートが出来、アイスクライミングに最適な場所になるのです。山の楽しみ方はいろいろあり、特に雪山はまた夏山とは違った楽しみが出来ると言う事を知って頂きたく、天気が悪かったのですがこの「冬の八ヶ岳」を書いてみました・・・。
この冬の八ヶ岳には、「大同心」や「小同心」など、さまざまなアイスクライミングのルートがあるのですが、今回はシーズンインなので滝の氷具合の偵察も兼ねて、「裏同心、ルンゼ」という入門ルートへ行って楽しんで来ました。
松本からのアクセス方法
松本市内からのアクセスはコチラをご覧ください→「八ヶ岳、美濃戸登山口」
真っ白であまり映っていませんが、夏山とこの冬山の景色の違いを比べて見ても、面白いです。
美濃戸口~赤岳鉱泉小屋(1時間半)
まだ薄暗い早朝7:00に、アイスクライミングのギアをバックパックに詰め、美濃戸登山口からスタートして赤岳鉱泉を目指して雪の降り積もった登山道を歩いて行きました・・・。
歩き始めはサラサラの雪をフカフカと気持ち良く歩いて行ったのですが、やはりというか当然と言うか、山奥へ入って行くごとに雪はドンドン深くなっていき、その中に岩や氷った箇所などもあってバランスがとりづらく、とても歩きにくい道になっていったのでした。 しかも結構な登りなので、マイナス気温でも汗ダクになってしまいました。熱いやら、寒いやら、体温調節がとても忙しかったです。
約1時間半程登って行くと、アイスクライミングのメッカである「赤岳鉱泉小屋」に到着しました。左手に見えるのは、人工的に練習用として造られたアイスクライミング用の氷のゲレンデ、その名も「アイスキャンディー」です!! アイスクライミングを楽しみたい&練習したいという冬山好きな人達は、みんなここへ来てアイスアックスを振って登りの練習をしているらしいです。
「赤岳鉱泉」の山小屋の中は、とても広くて暖かくて快適そうでした。 そして、外の「アイスキャンディー」用にレンタルのアイスアックスなどもたくさんあったり、登山用品もたくさん陳列してあり、ここが冬山登山のメッカである自負がうかがえます! 冬山ガイドさんやアイスクライマーの方々がここへ来て楽しむのが良く分かりました。 そして食事のメニューも5種類ものカレーがあったりと、とても充実して素晴しい小屋でした。
今回の僕達は日帰りだったので、この「赤岳鉱泉小屋」で休憩だけさせて頂いて、ここで装備をアイスクライミング用にハーネスやアイスアックス、アイススクリューやカラビナなどを用意して、この赤岳鉱泉の裏手にある「裏同心」と進んでいったのでした。
裏同心ルンゼF1~F6を経て~大同心稜線(3時間程)
「赤岳鉱泉」小屋の裏手を少し登って行くと、「裏同心ルンゼ」の凍った滝群が見えて来ました。 ここが最初の氷瀑のF1です。この「裏同心ルンゼ」ルートはいくつもの小さな凍った滝を越えて行くような感じのルートになっています。稜線まで登って行くとF6まであります。
この辺りまで来ると、標高が上がったせいなのか気温がかなり下って来ていて、休憩などで止まると汗で濡れたインナーのせいで、一気に極寒になってしまうのでした。たぶんマイナス10℃以下だったとと思います! 吹雪も相変わらずで、辺りは真っ白なのでした・・・。
ここから、やっとアイスクライミングが始まります! 腰にハーネスを付けてお互いにロープを結びあい、アイススクリューやカラビナを用意して、凍った滝にアイスアックスを振って打ち込んで、足のツメであるアイゼンも氷に蹴り込んで、登って行くのです! (画像は二段目のF2の部分です)
フォローで僕が登って行きます。左上に伸びている雪のルートが、これまで登ってきた氷瀑のルートになります。ここは夏は滝になっている場所なのですが、凍りつくとこのようにアイスクライミングで登れるルートになるのです。
凍った滝と滝の間の箇所は歩きになるのですが、この日は大雪の日だったので、腰まで埋まるラッセルを強いられました・・・。いくら足で雪をかいてもなかなか先に進まず、これが一番辛かったです。かなり疲れました。
それでも、この最後のF6の滝まで来ました。ここを登って越えて行けば、氷瀑にアイスアックスを使って登るアイスクライミングは終了になります。あとは雪の急登を稜線まで詰めて登ればこの「裏同心ルンゼ」のルートは終了となります。最後の氷の感触を慈しむように楽しんでいきました。
そして、八ヶ岳の名物大岩「大同心」の稜線に到着しました。この「大同心」という大岩は、あまりに大き過ぎて上下2枚にしても全くカメラに収まりきらないのです。この日は吹雪の日で辺りは真っ白だったので、「大同心」も全部は見ることが出来ませんでしたが、それでも圧倒的な大きさでした! この日は全ての景色が白い雲の中で、全てがモノトーンな色彩の無い幻想的な世界でした。
大同心稜~赤岳鉱泉~美濃戸口(3時間程)
帰りは「大同心」の稜線から尾根伝いに、木も岩も真っ白に雪に埋もれた超急坂の登山道を下って行ったのでした。下りも雪で隠れた岩が凍っていてツルツルと滑って歩きにくくて、結構時間がかかりました・・・。 色彩も雑音も無い本当にモノトーンな世界に、風と自分達の足音だけが響いていました。
「赤岳鉱泉」からの帰りは、中山乗越を通って行者小屋経由で歩いて帰って行きました。雪の積もった登山道の下りは、とても歩きにくくて、赤岳鉱泉からも結構時間がかかってしまいました・・・。
*アイスクライミングは、冬山登山のかなり上級者な一部の人だけが出来る事だと言うイメージがありますが、全くやった事が無い方でも「赤岳鉱泉小屋」の「アイスキャンディー」などの練習場とかならガイドさんと一緒に楽しむ事が出来ます。ちょっと興味がある!という方は山岳ガイドさんにお願いしてみてはいかがでしょうか? 山の世界がまた広がると思います。
【注意!】もちろん今回の「冬の八ヶ岳、裏同心ルンゼ」アイスクライミングは、冬山登攀のアイスクライミングルートなので、クライミングギアが取り扱えるエキスパートの方のみが出来るルートです。アイスアックスとアイゼンを使いこなすスキルが必要ですし、冬山での行動やマイナス10℃の中での体温管理もたいへんで非常に厳しいです。もし、どうしてもこの「裏同心ルンゼ」ルートに行きたいと思われる方は、必ず!アイスクライミングが出来る専門の山岳ガイドさんと一緒に行って下さい。よろしくお願いします。
【取材・登山者:ハタゴニアン】