常念山脈(三股~蝶ヶ岳~常念岳の手前まで)縦走往復
蝶ヶ岳は、長野県松本市と安曇野市にまたがる標高2677mの山です。蝶ヶ岳の名前の由来は、残雪の雪形が蝶に似ていることからです。西側には穂高連峰があり、槍・穂高の迫力ある眺めが楽しめます。百名山でも、二百名山でもありませんが、眺めの素晴らしさから人気の山です。
今回は、常念岳の南にある標高2512mの山を便宜的にピークFとして登山コースを紹介します。ピークFには三角点があります。地図上に表示されているのですぐにわかると思います。ここからの眺めも素晴らしいのですが、山名はありません。(上の写真が、ピークFからの眺めです)
今回紹介する登山ルートは、安曇野市の三股(みつまた)から蝶ヶ岳に登り、蝶ヶ岳から常念岳に向かう途中のピークF(標高2512m)まで行き、来た道を戻る往復コースです。1泊2日の行程です。
一日目は、三股から登り、蝶ヶ岳と北側にある蝶槍まで行き、道を戻って蝶ヶ岳ヒュッテに宿泊。二日目は、蝶ヶ岳ヒュッテからピークFまで行き、戻って三股へ下山。
常念岳はどこから登ってもきつく感じます。「もう常念岳には登らなくてもいいかな~、でも槍・穂高の眺めを満喫したいな~」という方におススメのコースです。今回は山頂付近の紅葉が終わった秋の山行記録です。
上の写真の赤い丸印の間を稜線沿いに歩きます。(写真は美ヶ原王ヶ鼻からの眺め)
文中のA~Fは場所を特定するために地図上(イメージ)に記した場所と一致しています。上の画像は、カシミール3Dを使用して製作しました。
アクセス
<マイカー又はタクシーで>
安曇野市堀金の宿泊・日帰り入浴施設「ほりでーゆ~四季の郷」を目安に松本市から西に向かいます。
ほりでーゆ~四季の郷が左手に現れますが、そこを通り過ぎ真っ直ぐにゲートのある道の方に進みます。道なりに登っていくと三股の駐車場に着きます。カーブが多いのでカーブミラーで確認されやすいように昼間でもライトをつけて走行することをお薦めします。
三股駐車場~まめうち平 1時間40分
三股駐車場
男女別のトイレがあります。トイレットペーパーはついてます。
月曜日の朝6時ごろ、車の駐車率は3分の1を超えている感じでした。70台駐車可能。ここより下にも駐車場が増設されました。
2015年は8月のお盆過ぎから平年よりも気温が低くなり、紅葉のピークも例年よりも10日ほど早くなりました。駐車場付近(標高約1350m)は色づき始めたところでした。
駐車場から登山口までは広い砂利道の林道です。15分くらい歩きます。
三股登山口
補導所の建物とトイレの建物があります。補導所には登山届提出用のポストがあります。この先は蝶ヶ岳ヒュッテまでトイレはありません。登山口は蝶ヶ岳・常念岳の分岐になっています。蝶ヶ岳へは真っ直ぐ進みます。樹林帯を歩いていきます。
登山口から10分ほど歩くとオブジェのような苔むした木があります。このちょっと先につり橋があります。
2年ぶりに通った登山道は、かなり整備されていました。力水(ちからみず)直前の道は、いつも登山靴が濡れる(かぶることはありませんでした)場所だったのですが、濡れずに歩けるようになっていました。力水は飲めます。
力水から10分弱歩いたところにある「ゴジラみたいな木」の前にはベンチができていました。
まめうち平~蝶ヶ岳山頂 2時間30分
まめうち平(標高1910m)
まめうち平は周囲を樹木に覆われているため視界は開けていません。休憩しやすくベンチがあります。
まめうち平から先は、ほぼ2年前と同じでした。登山口からまめうち平までが丁寧に整備されたようです。
樹林帯が続きます。
視界が開ける場所では、美しい紅葉が眺められました。
蝶沢の紅葉。標高2150m。まめうち平から50分ほど。
標高2200mは超えていたと思いますが、木の葉はすっかり落ちていました。
まめうち平から1時間ほど経過した所で、大きな石が目立ち始め、歩きにくくなってきます。「悪路」と書かれた茶色の表示板もあり、ここから悪路のスタート。再び茶色の「悪路」表示板が出てきたら悪路の終点です。この間、約20分。
途中で霧が濃くなり、山頂も雲で覆われているのかと心配しましたが、雲海ははるか下になり、晴天です。
まめうち平から2時間25分弱で大滝山との分岐。山頂まであと5分ちょっと。
ハイマツの中の道を進みます。
槍ヶ岳がちょこんと見えます。何回登ってもうれしい一瞬です。
この日は稜線に出たとたんに風が強く、すぐに合羽を着ました。
蝶ヶ岳山頂 標高2677m
三股駐車場から休憩を含めて4時間30分かかりました。
とにかく風が強かったので、早々に蝶ヶ岳ヒュッテに入り、チェックイン。
スタッフの方に「風が強いですね」と言うと、「昨日まで1週間くらいずっともっと強い風でした。今日は弱いほうです。」と言われました。そう言えば1週間前に乗鞍岳に行ったのですが、やはり風が強く参ってました。
蝶ヶ岳ヒュッテ~蝶槍 往復1時間45分
寒さに耐えられるように身支度を整えてから蝶槍に向かいました。
この時の支度は、ズボンの上に合羽のズボンを履き、長袖シャツの上にダウンを着て、その上に合羽の上着。合羽のフードを帽子の上にかぶりました。ニットの帽子を持ってくればよかったと思いました。手袋をはめていたのに手が冷たくなってきたので、フリースの手袋の上にニットの手袋をはめました。
ゆっくり歩いて行き55分、帰り50分くらいです。素晴らしい眺めなのでゆっくり歩きたくなります。しかし、この日は風が強かったために眺めるどころか、石積みの陰で風をしのぐほどでした。
蝶ヶ岳の稜線は広く、「二重山稜」になっています。霧が出たときなどは道を間違えやすいので注意してください。
蝶槍には、黄色のペイントで「TOP」と書かれていました。2年前にはなかったような気がします。夕食の時に九州から来た方と話したのですが、蝶槍には「蝶槍」という表示が何もないので、多分ここが蝶槍なんだろうな~と確信がなく思ったとのこと。確かに初めて来た方にはわかりにくいかもしれませんね。今は黄色字の「TOP」が目印です。
蝶ヶ岳ヒュッテ
空が色づき始めてきたのですが、夕食の為に山小屋の中へ。
夕食は17:30分から。
2015年に日本二百名山一筆書き踏破を行っていた田中陽希さんが、この日(10月5日)蝶ヶ岳を通過したらしく、お隣の席の方から教えていただきました。後日テレビで確認したところ、霞沢(かすみざわ)岳から大天井(おてんしょう)岳に向かう途中に蝶ヶ岳ヒュッテに宿泊したようでした。二百名山ではないので蝶ヶ岳は取り上げられず残念でした。
食事を終えて外に出てみたのですが、やはり寒くすぐに山小屋の中に戻りました。
宿泊客はそれほど多くはなく、部屋はゆったり広々と眠ることができました。この山小屋は、広い更衣室があるのもありがたいです。2015年の価格、水1リットル当たり200円、お湯1リットル当たり300円、1泊1食付き8,000円、お弁当1,000円。お弁当は夜にもらえます。
二日目
昨日の強風が嘘のように穏やかな朝でした。
5:10前、まだ空が暗い。
5:45ごろ、ご来光。
穂高連峰に写る影は、この蝶ヶ岳のある常念山脈の陰です。
蝶ヶ岳ヒュッテ~ピークF 往復4時間45分
休憩を含めなければ、行き2時間10分くらい、帰り2時間35分くらい。この時休憩を入れて往復で5時間40分かかりました。
この先にトイレはありません。
6時ごろ蝶ヶ岳ヒュッテを出発。
蝶槍からの眺め。 写真上の鞍部Aと池Bは蝶槍からは見えませんが、だいたいの位置の目安として記しました。
蝶槍からの下りは急です。1~2分ほど岩を掴んで下ります。そこを過ぎると急斜面の砂地を歩きます。滑りやすいのでストックがあると便利です。砂地も短い時間で3分くらいでしょうか。この先も鞍部Aまでは比較的急な下りです。ストック1本を使って下りました。鞍部Aの直前に梯子があります。
鞍部A(標高2462m)は気持ちの良い印象があったのですが、木の葉が落ちた光景はさみしく感じました。それでもこの時期にしか見られない植物の姿もあり面白いです。
鞍部Aから登って、少し下ったところに小さな池B(標高約2500m)があります。
池Bから再び登り、15分ちょっとでピークC(標高2592m)に着きます。目指すピークFよりも80m標高が高いのですが、木があるために穂高連峰の山並みをバ~ンと見ることはできません。それでも気持ちの良い場所なのでここで朝食のお弁当を頂きました。
鞍部Dに向かう途中、常念岳の山容が美しく見えます。
鞍部D(標高約2460m)からは緩やかな上り坂。(お花シーズンには鞍部Dでクロユリが見られました。)ピークE(標高約2480m)の西側を通ります。高木が多く、周囲の山を見ることはできません。やがて低木のハイマツ帯になります。ハイマツ帯を抜けるころには傾斜がきつくなり始め、視界が開けます。
ピークCから35分ほどでピークFに到着。ここからの眺めも最高です。山頂が広いので多くの方が休憩していました。ちょうど常念小屋を出発した人たちが到着したころだったのかもしれません。(昭文社の登山地図によれば、常念小屋からピークFまでの所要時間は1時間30分になっています。)
ここから常念岳に登る気にはなれないのですが、2年前に通った常念・前常念を何度も眺めて懐かしく思ったり、今回は登らないで済むことにホッとしたり。
帰りは来た道を戻るだけです。
ピークF(標高2512m)からピークC(標高2592m)までは40分弱かかりました。
ピークCから蝶槍までは1時間かかりました。
蝶槍に登る手前からの眺めが素晴らしく、しばらく足が止まってしまいました。
上の動画は、蝶槍に登る手前の眺めです。わずかに音がします。
蝶槍~蝶ヶ岳ヒュッテ 55分
上の写真は蝶槍からの眺め。
今まで何度も蝶ヶ岳に来ているのに2664.5mの三等三角点立ち寄ったことがなかったので、今回初めて確認しました。以前は蝶ヶ岳の山頂でした。現在の蝶ヶ岳の山頂は、蝶ヶ岳ヒュッテの南側にあります。
蝶ヶ岳ヒュッテ~三股駐車場 3時間10分
蝶ヶ岳ヒュッテ~まめうち平まで 1時間50分
まめうち平~三股駐車場まで 1時間20分
「悪路」の区間は十分に注意して下ってください。
まめうち平からの下りは、登山道が整備されて階段が多くなったように思います。踏み段に合わせて歩幅が小さくなったので、膝への負担が多少軽くなったかもしれません。
だいぶ下ってきたところで、向かいの山の紅葉と滝が見えました。
「ゴジラみたいな木」を見た時に、ゴジラが歳を取ったように感じました。秋が深まり苔の緑に艶やかさがなくなったせいでしょうか?
記者の感想
大好きな蝶ヶ岳を思う存分楽しめる山行でした。1泊2日で槍・穂高の山並みを味わうにはこのルートが最高だと思います。(「三股~蝶ヶ岳~常念岳~前常念岳~三股 三角縦走」の感想では、2泊3日で楽しみたいコースだったのですが、3日間は取れなかったので、2日間で実施することになりました。)
蝶ヶ岳周辺は、「妖精の池」「瞑想の丘」などの名称がつけられ何かこだわりがあるように思えます。それなのに素晴らしい眺めのピークFには名称がなく残念です。素敵な山名があれば訪れる人も増えるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
蝶ヶ岳~常念岳の間の様子は、「常念山脈縦走(中房温泉~燕岳~大天井岳~常念岳~蝶ヶ岳~徳沢」「三股~蝶ヶ岳~常念岳~前常念岳~三股 三角縦走」もご参照ください。
【2015年10月5日~6日実施 登山者・記者:アルプスちえみ】