周囲を山々に囲まれた松本市。
実は水がめの上に乗っているといってもいい土地なのです。美ヶ原高原などに降った雨や雪が、地中へ浸み込み何年もかけてミネラル分を含みながら、旅をしてきます。
また市内を流れる薄川や女鳥羽川の伏流水として地下を流れている水もこの水がめにたまっていきますから、地面の下で圧力のかかっている水たちは、出口をもとめて市内のいたる所で湧きだしています。この湧き出している水の水質は「まつもと城下町湧水群」として、環境省が選定する「平成の名水百選」に認定されているほどです。
圧力の弱い場所では、少し掘りこんで汲み上げている井戸もあります。
しかしながら旅をしてくる水たちも旅の長さや深さやで含まれてくるミネラル分の量にも差があり、水源ごとに味が微妙に違うというのがまた面白いところです。
もしかしたら今飲んでいる湧水は300年前の雨からの水かもしれないのだと考えるとロマンを感じますが、その分今ある水も300年先の人たちが安心して飲むことが出来るように環境も気にしていかないといけません。
きれいな豊富な水があることで松本は昔から染物が盛んでした。最後のすすぎはどこそこの湧水でという店もあったようです。また、江戸時代の松本城下では、水を多く使う豆腐屋が多かったことも歴史的に記されています。
湧水は年間通して12~14℃くらい。夏は冷たく冬は暖かく感じます。冬はこの湧水でお菜漬のお菜を洗ったり、夏はスイカや野菜を冷やしたり、水割りの水に使ったり、コーヒーを入れたりご飯を炊いたり・・・と昔からある湧水は普通に生活に溶け込んでいるので、もしかしたらありがたみを忘れているかもしれません。
さてこの水を使って、お菓子や飲み物、松本のお土産に活かされているものもあります。
「藤村」のやさしい味「水ようかん」
昭和13年創業の「藤むら」さんは、3代目の現社長が和菓子、先代のお父さんが洋菓子を作られている家族経営のお店ですが、地元で絶大な人気があります。
和菓子だけではなく、スイートポテトやれーずんクッキーなどもあり、いろんなお菓子を選べることが、とても楽しいです。
「藤むら」さんの豊富な湧水を使用した「水ようかん」
「水ようかん」は、創業時から販売していました。
ほんのりとした甘さが口に広がり、疲れた体にも丁度いい食感が、暑い夏にふさわしいお菓子です。
子どもからお年寄りまで人気の夏の和菓子です。
日本一になったこだわりの豆腐
1927年(昭和2年)創業の老舗お豆腐屋さんです。
お豆腐だけではなく、大豆や他の豆類を使った惣菜やスイーツを販売しています。
日本一を決める品評会で金賞を受賞したお豆腐屋さんです。
長野産のナカセンナリという大豆を使っています。大豆の甘みとコクがしっかりしたお豆腐です。
豆腐ドーナッツや豆乳プリン・豆乳ソフトなど原材料に豆乳を使用しているのでとてもヘルシ―です。豆乳の優しい控えめな甘さが癖になります。味わうほどに大豆の甘みも感じられる商品です。
工場敷地内の地下37mからくみ上げる井戸水をすべての商品に使用しています。
すっきりした甘味 お酒屋さんの甘酒
創業80年の善哉酒造では、敷地内に地下28メートルから自墳している湧き水を「女鳥羽の泉」と名付け、仕込み水として活かしてきたそうです。市街地に残る唯一の蔵元です。
お酒ももちろんおいしいのですが、今回ご紹介したいのは善哉酒造の甘酒。
米こうじのみで造った甘酒はすっきりとした品の良い甘味です。滋養強壮や美肌効果もあるといわれています。店の前の自動販売機でも購入できます。
松本発のクラフトビール! 松本ブルワリー
2016年創業、2018年には自社醸造所を開設し、松本の水を仕込み水にしてビール作りをしています。
松本産の農産物を原材料に使用したビールなど、常に新しいビールを提案しています。クラフトビールならではの満足感があり遊び心を感じさせてくれるビールが、地元のファンやクラフトビール好きな観光客を楽しませてくれています。
中町通りのタップルーム・信毎メディアガーデン内にある松本ブルワリータップルーム 本町店では、生ビールをいただくことができます。ボトルビールも常に数種類用意されているので、ビール好きなかたに何種か取り揃えてお土産にするのもおすすめです。
この他にも松本の水自慢はたくさんあります。
店の敷地の湧水で入れている喫茶店のコーヒーや紅茶、湧水を使うBarの水割り、湧水を使っているお蕎麦屋さん、染物屋さんが最後のすすぎに使ったという湧水・・・お店だけでなく個人でもこだわりのある使い方(ご飯を炊く、お茶をいれる、お風呂の湯に使う、洗濯をする・・・)をしている方も多く、たくさんある井戸端でそんなお話を聞くのも楽しいものです。
暮らしの中に根付いている松本の『水』を探して水巡りも是非!!