In Depth Stories

民芸の町から工芸の町へ

明治42年(1909)松本生まれの3人が民芸運動の柳宗悦とかかわり、松本を民芸の町へと発展させていきました。

民芸運動は、柳宗悦を中心に大正15年(1926)に始められました。
無名の職人が作った日常の生活道具を「民芸(民衆的工芸)」と名付け、美術品に負けない美しさがあると語り、新しい「美の見方」や「美の価値観」を示しました。柳宗悦は、日本各地の焼き物、染織、漆器、木竹工など、無名の職人による民衆的美術工芸の美を発掘し、紹介しました。その技術を復興させたり、時代に即した新しいものづくりを推進させたりしました。

丸山太郎の松本民芸館

松本民芸館は、昭和37年(1962)に柳宗悦の民芸運動に共感した、ちきりや工芸店の主人丸山太郎(1909~1985・松本市中町)によって造られました。

太郎は、柳宗悦の影響を受けて、民芸の研究に打ち込み、国内外を問わず、各地を訪れて民芸品を集めました。また、自らも民芸品の制作を手がけました。

昭和58年には、民芸館の6800点の蒐集品と土地・建物が松本市に寄贈されました。民芸館には、太郎の意志を引き継ぎ、世界各地の様々な暮らしの中で用いられた品々が展示されています。

池田三四郎と松本民芸家具

池田三四郎(1909~1999・松本市本町)は、昭和23年に、柳宗悦の講演を聞いたことがきっかけで民芸運動に加わりました。

松本は、城下町時代から続く手づくりの伝統があり、卓袱台や箪笥など和家具の生産が盛んでした。ところが戦争と終戦直後の混乱によって和家具の生産は休止状態になりました。三四郎は、「松本民芸生活館」を設立し、職人の育成に力を入れ、松本民芸家具と呼ばれる松本の家具作りを盛んにさせました。昭和51年(1976年)に「松本家具」の名で伝統的工芸品の指定を受けています。

三代澤本寿の型絵染

三代澤本寿(1909~2002・松本市埋橋)は、昭和11年に静岡で兄が経営する染物店に入り、型絵染作家になりました。型絵染は、描いた絵を型に彫り、版画のように布や紙に染めていくものです。その作品は各地で高い評価を得て全国的に有名な型染作家となりました。

芹沢銈介と知り合い民芸に開眼したといわれています。柳宗悦と交流・師事しました。芹沢指導のもと、『工藝』の表紙を制作しました。

松本生まれのこの3人は、柳宗悦・バーナードリーチ・浜田庄司・河井寛次郎らの支援を受けつつ終戦後の松本で民芸運動を盛り上げていきました。

そして『工芸のまち』松本へ

松本には「松本民芸家具」だけではなく「松本ほうき」や「みすず細工」など色々な工芸品がつくられています。こうした工芸と地域とのかかわりがあって「クラフトフェアまつもと」が生まれ「工芸の5月」「クラフトピクニック」へと続いてきました。

マエストロの黒い鉄が映えるまち 松本

松本のまちなかを歩いていると、黒い鉄が目を惹く看板や街灯を見かけます。
昭和30年代頃より「飯野工業」の社長飯野歌之助氏が制作した作品です。

作品を購入することは出来ませんが、「民藝・工芸のまち松本」のまち歩きのテーマのひとつとしてお楽しみいただければと思います。

飯野歌之助プロフィール
1921(大正10)年~1999(平成11)年 東京都中央区日本橋馬喰町生まれ
1945年(昭和20年)終戦直後に妻の故郷松本へ移住。
1955(昭和30)年 有限会社「飯野工業」を設立
1970(昭和45)年 大阪万博開催をきっかけに、この頃から照明器具の制作を始める。

大正時代創業の洋食屋「Bon Marcheタツミ亭」
江戸時代から続く名店 TADACHIYAただちや
昭和の雰囲気が溢れる食堂「しづか」

お土産

お気に入りの民芸が見つかるちきりや工芸店

松本民芸館を創立した丸山太郎は、家業であった商家の一角を「ちきりや工芸店」として民芸運動と関わりの深い作家や窯元などの品々を扱ったほか、国内外から集めた民芸品を販売していました。ご家族が引き継ぎ今も営業を続けるちきりや工芸店では、今も当時と変わらぬ窯元らの商品を豊富に揃えていますので、暮らしに役立つお気に入りや、ちょっとしたお土産の品をきっと見つけることができるでしょう。

日本各地の窯元から集まる焼き物は小さなものなら数百円~購入できます。
丸山太郎の絵を葉書にしたセットは、ちきりや民芸店のオリジナル商品です。品物を購入すると包んでくれる、包装紙や手提げ袋も、丸山太郎さんデザインのものです。

使い込むほどに味わい深くなる松本民芸家具

松本民芸家具の素材は、カバノキ科の落葉高木であるミズメザクラです。ミズメザクラは、加工が難しく、また家具に使われる200年~300年の歳月を経た木は、探すのも伐採して手に入れるのも難かしいものです。しかし、堅く、粘り強く、狂いにくいこの材が家具になり、使い込まれていくうちにますます美しくなります。塗装は、漆、ラッカー塗装などであり、すべて手塗りで仕上げられます。通常のラッカー仕上げで8回、漆仕上げは13回以上で時間を掛けて丁寧に塗り重ねられます。

品質の均一化、作業の効率化、資材の安定供給を目的としている松本家具工芸協同組合で製作された家具を販売しているのが中央ショールームです。

松本民芸家具は工場で出来た時がその完成ではなく、日々のお手入れや、時には修理を行いながら使い続けることで、新品の時とはまた違った美しさが醸し出されてきます。それが松本民芸家具です。

ここ中央民芸ショールームには松本民芸家具の製品が常時、400点余り展示されています。

額縁 (15,000円前後で購入できる)

お持ち帰りできる松本民芸家具のお土産として最適です。

*店内には、松本民芸家具とともに生活を彩る器や布類などが多数展示されています。これらの品々は、国内外の各地から集められています。


日常生活の中で使い勝手のよい三代澤本寿のお土産