COLUMN

鈴木ともこの
松本山案内

東西に山がそびえている、松本の街。

日本を代表する名峰がいくつもあり、市街地の標高も590mほどある山岳都市です。暮らしの中でふとした瞬間に山を見上げて、美しさにほれぼれすると同時に、積もった雪の量や木々の色づき具合で、四季を色濃く感じることもしばしば

街の東の、比較的近くにそびえている山々は2000m級の筑摩(ちくま)山地。その代表的な存在が「美ヶ原」で、松本では古くから「東山」と呼んで親んできました。反対に「西山」と呼んできたのは、延々と連なっている「北アルプス」。3000m級の名峰が集まる、登山者の憧れの場所です

山を見て方角を把握する、なんてことは松本では日常茶飯事で、「東山=美ヶ原、西山=北アルプス」と覚えておけば、迷うこともありません。

また、山からの恵みである湧き水も豊富で、街のあちこちに井戸があります。少しずつ水の風味が違うため井戸を巡るのも楽しいですし、湧き水を使っておいしく仕上がったお蕎麦やお酒やコーヒーをいただくのも楽しいです。

山登りはもちろん、山が暮らしに根づき、山の魅力あふれる松本。山にまつわる私のオススメを、「登る」・「歩く」・「眺める」・「味わう」に分けてご紹介いたします。(ちなみに、街なかはかなり真っ平です。快適に散策できますのでご安心を。)

漫画家/エッセイスト 鈴木 ともこ

『山登りはじめました』シリーズ(KADOKAWA)など著書多数。現在は上下巻となる長編のコミックエッセイ(新潮社)を執筆中。松本の街と山にほれ込んで、家族で松本に移住。東京出身。

鈴木ともこさん一家の上高地案内ブック
新まつもと物語・コミックエッセイ「鈴木ともこさん一家・上高地へ行く」

登る

山と言えば、山登り。いわゆるハイキングと違い、空も緑も岩肌もこの世のものとは思えないほど鮮やかな色彩で迫ってくる高山の世界。 しかも松本の山は、名峰ぞろいです。(しっかりとした登山装備が必要なコースです)

  • 槍ヶ岳

    3180m 5 1
    槍ヶ岳

    その名の通り、山頂が槍のように尖った山。登山者にとっては富士山に並ぶ日本の山のシンボルです。 上高地からの往復で2泊3日かかり、最後は鎖やハシゴがかかった岩をよじ登りますが、登頂の喜びは格別です。

  • 乗鞍岳

    3026m 3 3
    乗鞍岳

    バスで日本一高い登山口(2716m)まで行ける、日本一登りやすい3000m峰。 実はケーブルカーを使わないで登る高尾山(599m)よりも、標高差も標準的な所要時間も少ないです。ただし、高山病にはご注意を。

  • 美ヶ原・三城コース

    2034m 3 2
    美ヶ原・三城コース

    山頂が、広大な緑の台地になっている気持ちのいい山。山頂の一角まで車道が通じていますが、あえて下から登ることで、 静かな森や渓流、荒々しい岩の斜面など、変化に富んだ景色を楽しむことができます。登山口が町から車で30分と近いのも魅力。

歩く

アクセスしやすく、激しいアップダウンのない山歩きも、松本では楽しめます。 森や渓流や台地の気持ちよさを比較的手軽に味わえるコースです。(雨具や地図、飲料など最低限の装備は必要です)

  • 上高地

    1500m 1 5
    上高地

    日本第三位の高峰・穂高岳(3190m)を真下から見上げる景勝地。 山あいに広がる標高1500mほどの平地で、1時間ほどの散策から1泊2日のハイキングまで、 ほぼ平坦なコースを多彩に楽しめます。ホテルや売店、キャンプ場など観光施設も充実。

  • 美ヶ原・台上

    2034m 1 4
    美ヶ原・台上

    山頂が広大な台地になっていて、なだらかな草原歩きを楽しめる山。 バスや車に乗って山頂の一角まで上がれば、体力的に楽に2000mの世界を散策できます。 山頂にはホテルや山小屋、美術館があり、5月中旬~10月中旬は牛も350頭ほど放牧されています。

  • 御殿山

    840m 1 3
    御殿山

    松本の奥座敷と呼ばれる浅間温泉の、すぐ裏手にある山。 遊歩道(ハイキングコース)には、松本の町と北アルプスを一望できる見晴台を初め、 松本藩主を祀った小笠原家廟所や薬師堂、天満宮といった見所があります。所要は1時間半。

眺める

至るところから山を眺められる松本ですが、特に愛される展望台があります。 町歩きの途中に立ち寄ったり、ピクニックを兼ねて行ったり、ただ眺めることが贅沢になるスポットです。

  • 弘法山

    東日本で最古の築造とされる古墳(前方後方墳)がある丘。非常に見晴らしが良く、松本の町と北アルプスを見渡す絶好の展望台です。 北アルプスに陽が沈む夕景もすばらしいです。山の上から下まで一面に桜が植わっていて、春は夢のような色合いに。

  • 松本城

    北アルプスを背景に、計算され尽くしたロケーションに位置する松本城。客人にとって最高のもてなしだったのはないかと思うほど、 絵になる光景が広がっています。特に冬は、澄んだ青空と白い山肌のコントラストが美しいです。また、天守からの360度の景色も必見。

  • まつもと市民芸術館

    音楽ホールや劇場として使われている建物の3階トップガーデン。芝などで緑化されていて、市街地にあるオアシスのような場所です。 美ヶ原や、常念岳越しの槍ヶ岳などを望めます。芸術館の開館中は屋上への出入り自由で、屋上での飲食もできます。

  • あがたの森公園

    ヒマラヤスギの巨木の並木に圧倒され、広々とした芝生でくつろげる、気持ちのいい公園。芝生広場から美ヶ原や乗鞍岳を望めます。 風格のある旧制松本高等学校の校舎も現存し、現在は図書館やホールなどとして活用されています。

  • アルプス公園

    標高780mほどの山を利用した広大な公園で、北アルプスを真向かいに望みます。ピクニックが気持ちいいのはもちろん、遊具やアスレチック、 ミニ動物園、専用コースを走るローラー付きのソリなど施設も充実。お子様連れの方が一日中楽しめる場所です。

味わう

松本で味わう「食」には、山の存在があります。山の水と山の幸で、丁寧につくられたおいしさをたっぷりお楽しみください。

  • 牧場で出合える「おいしい」

    標高の高い山地の牧場でつくられたこだわりの乳製品は、その希少性もさることながら、大変おいしく人気が高いです。 美ヶ原や上高地、山の中で食べられるソフトクリームもぜひ!

  • 湧き水を使った「おいしい」

    松本の町には、湧き水が点在しています。町を流れる川も湧き水も、山の雪解け水。 そんな湧き水を利用した食事やお土産は、松本ならではの名物です。