もともと「民藝」や「クラフト」を扱う店が多い松本。
街中には個性的なセレクトが光る個人経営のセレクトショップが点在しています。
2010年頃からは、 店を開くため県外から移住してくるショップオーナーも増えているように感じます。
個性的な店主たちがマイペースに発信しながらも、 コンパクトなまちで店同士緩やかなつながりもあるような松本の街のありようが、 これから店を持とうという人を惹きつけるのかもしれません。
ショップオーナーたちに、 松本に移り住み店を始めた経緯と松本の印象、 取り扱い品の中から特にお勧めの逸品を聞きました。
故郷である岐阜県郡上八幡で木工作家としてシェーカースタイルのオーバルボックスなどで人気を集めていた井藤昌志さんと、ゲストハウス開業を考えていた奥様の万紀子さんが移り住み、開店した「ラボラトリオ」。
昌志さんが「クラフトフェアまつもと」出展のため毎年松本に来ていたこともあり、馴染みの深い松本の地での物件探しの一軒目、運命的に今の建物と出会ったそうです。設計士のつてで紹介された、元薬局。昭和8年に建てられた洋館で天井は高く、漆喰の装飾や洋風の窓。建物との出会いがあればこそ、万紀子さんの事業計画をゲストハウスからカフェに大きく変えてでも、ここにしたいと即決したそうです。
業務用の器や荒物、または作家の工芸品など、国内外ジャンルを問わず、暮らしの道具として提案したい品々を集めています。 心地よく暮らしを支える実質的な品々を提案するラボラトリオは、県内外から多くのファンを惹きつけています。
乾燥した気候が木工に適している。
オーナー井藤昌志さんのオーバルボックス
名古屋や東京で、40年以上前から骨董品を扱う仕事をしていましたが、松本では、織物作家や木工作家の展覧会を開催するために、年に何回も来ていたそうです。10年前、松本でお店を出したいと思っていたところ、紹介されお店を開きました。現在は、名古屋と松本を行き来して仕事をしています。
松本は、水・野菜・果物などがおいしいです。ピリッとした緊張感のある寒さも好きですが、この寒さがおいしい食材を作ってくれるのでしょうねと、松本の良さを語ってくれました。松本はお祭りやイベントも多く、暮らしを楽しめる街だそうです。
手入れをして着物を丁寧に直したり、古き良き布を選び帯に仕立て直したり、と古裂だからこそできるオリジナルな商品がたくさん並んでいます。古い物に手を加え、新しく魅力あるものにしているという自負心を持って仕事をしているそうです。
六九商店街にmonbusが現れたのは、2016年春のことでした。 しゃれた看板に誘われ中に入ると店内は白を基調にした壁に、 アンティークと新品の商品がすんなりと店に融けこみ リズミカルに店内を彩っている素敵なお店でした。
店長の山田照久さんは、山が好き、登山が好きで、夏は月2回、冬のシーズン中は1・2回と必ず松本に来ていました。お子さんの誕生を機に、自然に囲まれた環境で子育てをしたいと鎌倉から移住されました。横浜や東京で、雑貨やアンティークのセレクトショップで働いていた経験から松本で独立してお店を始められたそうです。
「野菜がおいしく、空気がきれいで本当に引っ越ししてきて良かったです。」
山田さんはイギリスを中心にヨーロッパの小さなまちを車でまわりながら、年に数回買い付けに出掛けます。買い付けたアンティーク物を土台とし古き良きものに合う、雑貨・洋服などを普段の生活に楽しく使えるものをセレクトしています。 フレンチリネンのワンピースや食器など、100年以上前のものとは思えない商品が並んでいます。日本製はもちろん、アイルランドやスコットランドのニット製品やマッキントッシュの撥水性のコートなど、日本の風土に合うように現地で製作しているそうです。
夕暮れ時中町通りを歩いていると、黒い蔵づくりの建物の中から煌めくランプの灯りがまるでアジアの果てに迷いこんだような不思議な雰囲気に惹きつけられます。店内に1歩足を踏み入れると、期待を裏切らない商品の数々「ないものはありません・・・。」ジャンルを分けることも種類を数えることもできない異空間を醸し出しています。
奈良県出身のオーナー・渡辺純さんと松本との関わりは20年位前からです。アフガニスタンの絨毯などの敷物を中町の蔵シック館で展示即売したことから始まり、不定期で何回か開いていたそうですが、6年前にご縁があり、このお店を開店されました。
ひとこと「変わった人が多い」
古いもの新しいもの職人あり作家あり、昭和を感じる日常生活品などとにかくいろんなモノが並んでいます。どのようにしてこのモノたちは、ここにいる? のでしょうか。渡辺さんに伺ってみると、「国内外を問わず出会った中で選んだものです。また置いてほしいと持ち込まれたものもたくさんあります。思い込みや固定概念をぶっ壊せ!という思いで心を豊かする生活道具を中心に置かれた品々により作られた舞台だと考えています。お客さんそれぞれが、自分のアンテナに引っかかった何かを感じ取ってもらえば良いですよ。」というお話でした。